基調講演 奥村弘教授(神戸大学大学院人文学科研究科)「地域文化遺産の今日的な位置ー災害時の史料保全から考える」
「歴史資料を保全する活動を行ってきたが、これまで図書館とは連携をしたいと考えていたができていなかったので、今回講演させていただいたことを契機に繋がっていきたい。午後の報告から図書館の活動について学びたい。」と挨拶され講演が始まりました。
講演の内容は、奥村先生の一連のご論考、
- 奥村弘「大規模自然災害と地域歴史遺産保全ー歴史資料ネットワーク10年の歩みからー」『歴史評論』(666) (2005.10)(Cinii)
- 奥村弘「地域歴史遺産の保全と海港都市神戸」『海港都市研究』1(2006.3)(神大機関リポジトリ)
- 奥村弘「地域歴史文化における大学の役割:神戸大学と小野市の連携を中心に」『地域・大学・文化:神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター年報』1(2009.8)(神大機関リポジトリ)
などをご覧頂けばよいのかと思います*1。
要旨としては、
- 日本では、特に山間部では、既に江戸時代より人口が減少しており、高齢化もあいまって地域の記憶力の低下が猛スピードで進んでいる。
- 地域の記憶力=地域歴史遺産の豊かな継承がなければ、減災文化(災害への対処方法)の継承もありえない。
- 地域にとって重要な遺産が地域歴史遺産で、残すような遺産がないところはまずます人口は流出していく。
- 一方で、関東大震災と阪神大震災を比べると、市民の記録を伝える力量は増大している。
- 地域歴史遺産は、単にあるものでなく「なる」もの。支持し自ら活動する住民が必要で、それには地域文化関係者の協同した持続的・組織的活動が必要である(公共図書館もそのなかに入る)。大学のサポートも必要。
- 史料ネットでも初期(第1期)には、名前・顔を知っていることが成功のポイントだったので、普段の活動のなかでそのような繋がりをもっておくことがいざ災害が発生したときに活きてくる。
といったところでしょうか(詳しくは上記参考文献をご確認ください)。
*1:奥村弘「歴史資料ネットワークの15年-被災歴史資料保全の「歴史」を考える」『災害と文化』4、2010年というのもあるようですが未読です。