事例発表

和歌山県立図書館「出張します!どこへでも お話しします!読書の魅力」
開館100周年を迎え、これまでの消極的な態度から積極的な態度へ。その一つとして、子どもの読書を推進するための出張講座の開始。読み聞かせ、ブックトーク学校図書館ボランティア支援、本の修理・整理、紙芝居作成、などなど要請があれば県内どこへでも出張。ブログを活用して情報発信するとともに、利害関係者の集まり(指導主事連合会・PTA連合会・公共図書館協会)で説明。間接支援ではなく、県立図書館が直接支援することで、市町村図書館の活動も活性化している。

都道府県が市町村を超えて直接講座を開くことについて質問用紙に書いて提出したところとりあげられまして、*1自力で出来ないところもあるのでやっていて、これをきっかけに市町村に業務を引き継いでいくこともねらいであるとのことでした。都道府県により事情が異なるのであれですが、今出来ていないところは予算的・人員的に厳しいからだろうから、引継はなかなか難しそうな気もしました。*2

たつの市立龍野図書館 「地域の力を高め地域を支援する図書館をめざして」
各種機関と連携している。学校・園とは、おはなし会等のほか、移動図書館で訪問したり、図書館で発展学習をしてもらったりしている。また、中学生による就業体験として、小学校での読み聞かせをしてもらっている(本を選んだりチラシをつくったりすることから)。関係機関とは、母子保健事業と連携してのブックスタート。学校教育課と連携して、絵本講座と学校図書館整備事業に関する講座(図書整理など)をしている。この講座を受講した市民にはボランティア登録をしてもらっており、学校図書館の支援に繋がっている。また、中央公民館と連携して講演会を開いたり、県立美術館の学芸員の方に、専門的な話とそれに関する本の紹介をしてもらっている。その他、地域行事に参加したり(写真展、パネル展、工作教室)、市民や中学生との読書会を開いている。

いろんな機関との連携というのはむしろ当然だとは思うのですが、報告テーマとなるのは、まだまだ全国的には出来ていないということなのでしょうね。こちらも質問用紙に書いて提出したものですが、県立美術館との連携の経緯は、元館長が県の職員だったことからとのこと。最初、大人向けのブックトークというのを企画して、その一つとして、学芸員の方にブックトークしてもらったことからはじまったそうです。今は、講演が主で、関連して本を紹介してもらっている感じとのことでした。

さて、質疑応答の際、別の図書館の方が、何かの会合で美術館担当の方と同席したときに、うちでは本物の美術作品を見てもらうのを受け持つから、鑑賞の導入部分を図書館で受け持ってもらえないか?と相談されたエピソードを話されていました。MLA連携というと、国レベルではデジタルアーカイブにおける連携がもてはやされている感もしなくはないですが、こういう地道な連携は市民が実感しやすい気もしました。

京都市醍醐中央図書館「子どもと本をつなぐ〜"出前貸出し"はじめました」
前提として近隣の学校と連携していた。子どもに本を読んでもらい、図書館に親しんでもらうために、授業とは関係ない、子どもたちに読んで欲しい、また、読んで喜びそうな本を選定(要望も聞き、それは次回訪問時に反映させる)、小・中学校を訪問する。団体貸出とは異なり、図書館自体が出前するイメージで、その場でハンディターミナルを使って貸出処理(2冊2週間)。図書館行事のチラシを配るとともに、返却は図書館にすることで、保護者ともに図書館に来てもらう契機に(その際、さらに本を借りていってもらえる。リピーター率33%)。各自の役割(学校図書室=専門図書室→調べ学習/公立図書館→読みたい本を読む場所)を考えたうえで連携することが重要。

協力車で訪問してお話を聞いていてもそうなのですが、児童サービスを通じて、大人にも図書館に来てもらうというのが一つのパターンになっているなぁ、と聞いていて思った次第。とするならば、大人にも魅力的な図書館にしておくことも必要だと思われる。そこで失望されたら終わりですもんね。

*1:交流協議の際、中西館長が、県、市町村というのは設置母体の差だから、やって構わないみたいなことを仰っていましたが、確かに設置母体に関わらずやるべき事項もありますが、県と市町村で役割分担すべき事項というものがあり、今回の報告内容は基本的にはむしろ後者だと思われるのです。

*2:そういう地域に対するサービスは、このまま県立がせざるを得ないような(それはそれとしてありとしても)。知識・経験的に厳しいのであれば研修により引き継げる可能性はあるのだけど。